施設看護師の目標の具体例まとめ｜新人・中堅・ベテラン別に紹介

施設で働く看護師にとって、「個人目標を立てること」は日々の業務の方向性を明確にし、成長を実感するうえで欠かせません。

しかし、「施設看護師としてどんな目標を立てれば良いのかわからない」「新人と中堅、ベテランでどう違うの？」と悩む方も多いのではないでしょうか。

本記事では、特養（特別養護老人ホーム）や老健、有料老人ホームなどで働く施設看護師の目標の立て方と具体例を、新人・中堅・ベテラン別にわかりやすく紹介します。

自己評価表や人事考課の記入時にもそのまま使えるよう、実際に現場で使われている例文を多数掲載しています。

「来年度の個人目標をどう書こう…」という看護師さんは、ぜひ最後までご覧ください。

施設看護師の目標を立てる目的と考え方

施設看護師が目標を立てる目的は、自己成長の促進とチーム全体のケア品質向上にあります。

病院とは異なり、施設では「慢性的な疾患を抱える高齢者の生活を支える」ことが中心となり、医療的処置よりも「生活の質（QOL）」を意識した支援が求められます。そのため、単なる看護技術の向上だけでなく、「他職種連携」「入居者との関係構築」「家族対応」「記録の質」など、包括的な目標設定が重要です。

また、個人目標は評価表に直結するため、上司が評価しやすい“行動・成果・期限”が明確な目標にすることがポイントです。

施設看護師の個人目標を立てるポイント

目標を立てる際には、SMARTの法則を意識することが大切です。

この5つを意識することで、より評価される目標を立てられます。

新人施設看護師の目標具体例

新人の施設看護師は、まず「業務を正確に覚える」「利用者と信頼関係を築く」「報告・連絡・相談を徹底する」ことが最優先です。

病院勤務と比べて医師が常駐していない環境では、異常の早期発見や判断力が重要になります。

以下に具体例を紹介します。

例文①：基本的な看護業務の習得

• 目標：「1年間で施設看護師として必要な基本業務（バイタル測定、服薬管理、記録作成、介助補助）を一通り習得し、自立して実施できるようにする」
• 行動計画：「先輩看護師の記録方法を週1回確認し、指導を受けた点を翌週実践に生かす」

例文②：報連相の徹底

• 目標：「異常を見逃さず、すぐに上司や医師に報告できる判断力を養う」
• 行動計画：「1日1件以上、利用者の変化に気づいたことを看護記録に残し、チーム会議で共有する」

例文③：利用者との信頼関係構築

• 目標：「利用者の表情や言葉に注意を払い、安心感を与えられる看護を目指す」
• 行動計画：「毎日5分以上、利用者との会話の時間を確保し、表情・言動の変化を観察記録する」

新人期は「できるようになること」を重視し、数値化よりも過程の可視化がポイントです。

中堅施設看護師の目標具体例

中堅看護師（経験3～7年程度）は、実務能力に加え、後輩育成・多職種連携・リーダーシップの強化が求められます。

施設全体の動きを見ながら、チームをまとめるスキルを磨く段階です。

例文①：後輩指導スキルの向上

• 目標：「新人看護師が安心して業務に取り組めるよう、教育計画に基づいた指導を実践する」
• 行動計画：「月1回、指導記録を作成し、教育担当者にフィードバックを受ける」

例文②：多職種連携の質向上

• 目標：「介護職・リハ職・ケアマネジャーとの情報共有を円滑に行い、入居者のQOL向上を図る」
• 行動計画：「週1回のカンファレンスで看護視点から意見を出し、記録に反映する」

例文③：記録・報告の質向上

• 目標：「看護記録をより簡潔かつ的確に記載し、他職種が読みやすい情報提供を行う」
• 行動計画：「毎週の看護ミーティングで記録内容を振り返り、改善点を明確にする」

例文④：感染予防・事故防止への取り組み

• 目標：「インシデント発生件数を前年度より10％減少させる」
• 行動計画：「ヒヤリハット報告を週1件以上提出し、原因分析を共有する」

中堅期は、“チームで成果を出す”意識を持つことが重要です。自分だけでなく、周囲の成長を促す目標が評価されやすくなります。

ベテラン施設看護師の目標具体例

ベテラン看護師（8年以上）は、管理・教育・マネジメント能力が期待される立場です。

施設運営全体を見据え、チームを導く目標設定を意識しましょう。

例文①：看護体制の見直しと業務効率化

• 目標：「看護業務の分担を見直し、記録業務の時間を20％削減する」
• 行動計画：「電子カルテのテンプレートを整備し、記録統一化を図る」

例文②：教育体制の確立

• 目標：「新人教育マニュアルを改訂し、教育の質向上に貢献する」
• 行動計画：「年2回、教育委員会で育成状況を共有し、課題をフィードバックする」

例文③：施設全体の感染管理推進

• 目標：「感染予防委員会を中心に、全職員の感染防止意識を高める」
• 行動計画：「月1回の勉強会を開催し、職員参加率を80％以上に維持する」

例文④：家族対応・苦情対応スキルの強化

• 目標：「家族からの相談やクレームに対し、丁寧かつ迅速に対応し、信頼関係を維持する」
• 行動計画：「対応事例を記録・共有し、年2回の振り返りミーティングを実施する」

ベテラン層は「組織貢献」「後輩育成」「制度改善」といった視点を含めることで、より高く評価されます。

施設看護師が目標を立てる際によくある失敗例

目標設定でありがちな失敗は次の3つです。

1. 抽象的すぎる：「コミュニケーション能力を高める」など、具体的行動が不明確。
2. 他人任せの内容：「医師の指示を理解するよう努力する」など、自分でコントロールできない内容。
3. 評価しづらい：「頑張る」「意識する」など、数値化できない表現。

これらを避けるためには、「誰に」「どのように」「いつまでに」「何をするか」を明示しましょう。

たとえば「利用者10名の服薬管理ミスをゼロにする」「月1回カンファレンスを主導する」など、数値＋期限＋行動で書くと評価者にも伝わりやすくなります。

個人目標のテーマ別具体例一覧

施設看護師の目標テーマは多岐にわたります。

以下に代表的なテーマと例文をまとめます。

テーマ	目標例
コミュニケーション	利用者・家族との信頼関係を深め、安心して生活できる関係を構築する
記録・報告	看護記録の内容を簡潔かつ正確に記載し、情報共有の効率を上げる
感染予防	インシデントを減らすために手指衛生を徹底し、職員全体の意識を高める
チーム連携	他職種カンファレンスで看護視点から積極的に意見を発信する
教育・育成	新人指導マニュアルを整備し、教育担当として後輩の自立を支援する
医療処置	吸引・褥瘡処置などを安全かつ確実に行い、記録と報告を徹底する
組織貢献	看護体制改善に向けて委員会活動に積極的に参加する

このように、テーマごとに小目標を分けて設定することで、1年を通して振り返りやすくなります。

まとめ

施設看護師の個人目標は、自分の成長だけでなく、チーム全体の質向上にも直結する重要な要素です。

新人は基礎力の定着を、中堅はチーム貢献と指導力を、ベテランは組織運営や教育体制づくりを意識した目標設定を行うことで、キャリアアップにもつながります。

また、個人目標は「評価のため」ではなく、「より良い看護を提供するため」の道しるべです。

今回紹介した具体例をもとに、あなた自身の業務内容や施設方針に合わせて調整すれば、人事考課や自己評価の際にも説得力のある内容になります。

明日からの看護に活かせるよう、“自分らしい成長目標”を明確に言語化していきましょう。